貶めて手にいれるものとは


以前、友人と食事をしようと駅に集まりました。夕方の、ちょど良い時間帯。予約をしていなかったのでお店を探しつつ何を食べるか迷っていると、とある店の客引きの人が声をかけてきました。

その場でやんわりと断り、他のお店に決めて入ろうとした時、

 

「あーあ、その店、不味いですよ」

 

と、聞こえた。振り返ると、さっきの客引きの人。

私の表情に気がついたのか、それから声もかけずそそくさと立ち去って行きました。

その聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言われた言葉が、今も残っています。

 

 

こういう言葉ってよくありますよね。自分と相手を比較して自分を選んでもらうために、相手にバツをつけること。

耳にするたびに、他を貶めるのではなくて自分の良いところを言えばいいのにと思います。

マイナス面を言ったら、相対的に自分がプラスとなると思っているのでしょうか。もしくは、プラスとならなくても相手よりも自分の方がマシだと思わせる戦法?

選んでもらえさえすれば良いのでしょうか。たとえ一時的でも。

 

「その店、不味いですよ」

「わかりました、じゃああなたのお店に行きます」

そんな簡単なことではないでしょう。

 

 

私はこの言葉の何にそんなに引っかかっているのか。

そもそも「不味い」という個人の感覚を、名前も知らない他人に決めつけられたことが不快なのかもしれません。

「その店も美味しい。けどうちの店も美味しい」くらい言いきってオススメしてくれたら良いのにと思わずにはいられません。

 

 

幸か不幸か、客引きの人は店名が入っている服を着ていたのでその店は覚えています。

今まで一度も行ったことは無いですが、そのことがあってからもその店には一歩も近づいていないし、今後行くつもりもありません。

どれだけお料理が美味しくても、気持ち良く食事が出来ないところにわざわざお金を払って食べようとは思わないのです。

 

 

ちなみに入ったお店はとても美味しかったです。しかもリーズナブルで、店員さんのサービスも素晴らしくて。友人と楽しく食事をしたことを覚えています。

もしかしたら、ひがみが入っていたのかなあ。お客さんがたくさん入っていたので、嫉妬もあるのかもしれません。

それでも、あの言葉は如何なものでしょう。

いまだにもやもやとしたものが残ります。