毎日が自分を作るー『太陽のパスタ、豆のスープ』を読んで


宮下奈都さんといえば、何の作品を思い付くでしょうか。『よろこびの歌』?『羊と鋼の森』?『羊と鋼の森』は映画化もされましたね。あの映画も素敵でした。

そんな宮下奈都さんの本で、私が一番好きなのが『太陽のパスタ、豆のスープ』です。図書館で偶然手に取り、今はいつでも読み返せるように文庫版で手元に置いています。

 

今回は『太陽のパスタ、豆のスープ』をご紹介します。

作品情報

著者  宮下奈都

発売日 2010年1月(文庫:2013年1月)

出版社 集英社

あらすじ・作品説明

結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽(あすわ)。失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは”ドリフターズ(やりたいこと)・リスト”の作成だった。自分はこれまで悔いなく過ごしてきたか。相手の意見やその場の空気に流されていなかっただろうか。自分の心を見つめ直すことで明日羽は少しずつ成長していく。自らの気持ちに正直に生きたいと願う全ての人々におくる感動の物語。(裏表紙より)

感想

本作の主人公は婚約破棄だったけれど、人生誰しも想像もしていなかった衝撃的な体験をしたことはあるのではないだろうかと思います。それは他人と比べることではなくて、自分にとっての体験で良い。

そのときに、どうやってこれから生きていけばならないのだろうと思い悩み立ち止まることも一度や二度では済まないかもしれません。

 

 

本作を読んで、救われたと思ったんです。

同じ体験があるわけではないけれど、何かがあったとき今まで通りの日常を過ごすことの困難さは理解していて。過去をどれだけ思っても、過去は過去でしかなく変えられないものだからです。

そういうとき、劇的な何かを求めて動いてしまいそうだけれど、それは結局劇物であって拒否反応や反動がより事態を悪化させることもあり。

 

だから、淡々とすすむ毎日が人を立て直すことだってあるのだと信じたいです。

簡単には上手くいかないかもしれないけれど、ゆっくりと着実に。

 

そしてそれは、自分の考えや思いを他の誰かではなく自分自身で引き出さなければならないものだということも感じました。

自分の意思で進もうとすることが「今」と「未来」を作っていく、そういう人まかせではない自分の希望を描く本です。

フレーズ

自分探しなんかをするつもりはない。自分を探したって始まらない。私には何にもないんだから。探すんじゃなくて、新しく付け加えるのだ。そうして、なりたい自分になる。そのためのリストだ。(宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』p174)

「ええとね、リストはつまりきっかけだったんだよね。今の自分やこれからの自分を考えるきっかけ。だから、書いたらポケットに入れて、あとは自分で進んでいくしかないんだよ。書いたことを信じて、これがあるからだいじょうぶ、こっちで間違ってないって」(宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』p250)

 

以前、いざドリフターズ・リストを書こうと思ったとき、私は書けませんでした。ありたい自分の姿や、これからのことを考えられなかったからです。何もやりたいことを思いつかず、自分はなんて薄い人間なんだろうと。

 

でも、今後のことを考えるきっかけにはなったと思っています。

主人公の明日羽も何度も見返して書き直していますし、都度振り返り見直していけば良いのだと。

そう思うと気が少し楽になりました。

思い詰めたってどうしようもないこともあります。

 

みなさんだったら、ドリフターズ・リストに何を書きますか?